2026年度予算案の読み方 — 財政健全化は完全に破綻した

2026年度予算案 — 過去最大の「膨張」

2026年度一般会計予算案の総額は約115.5兆円に達し、13年連続で過去最大を更新した。歳入の内訳は、税収が約72.1兆円、税外収入が約7.2兆円、そして新規国債発行が約36.2兆円だ。つまり、歳出の約31%を借金で賄っている。これは家計に例えれば、月収50万円の家庭が毎月66万円を使い、不足分の16万円をクレジットカードの借入で埋めているようなものだ。関係者によれば、財務省の主計局では「歳出の上限設定」を強く主張していたが、各省庁の概算要求を抑えきれず、結果的に膨張を許したという。

社会保障費の「聖域」化が財政を蝕む

歳出の最大項目は社会保障関係費で、約38.5兆円(歳出の約33%)に達する。10年前の約31兆円と比較して約24%増加しており、高齢化の進行に伴い毎年約1兆円ずつ自然増が続いている。年金、医療、介護の3分野が大半を占め、政治的に「聖域」として削減の議論すら許されない空気がある。筆者の試算では、現在の制度をそのまま維持した場合、2035年の社会保障関係費は約48兆円に膨張する。税収の増加では到底追いつかず、国債依存度はさらに高まる。ある外資系金融機関の幹部は「日本の予算編成は、社会保障費という巨大な固定費に支配されている。裁量的に使える予算は実質的にGDPの5%程度しかない」と分析する。

防衛費倍増と少子化対策の「財源の謎」

2026年度予算のもう一つの特徴は、防衛費の大幅増額だ。防衛関係費は約8.5兆円に達し、GDP比で約1.5%の水準に到達した。政府はGDP比2%の目標を2027年度に達成する方針だが、追加で必要な約2.5兆円の恒久財源は依然として不明確だ。さらに、少子化対策として「こども未来戦略」に基づく約3.6兆円の予算が計上されているが、その財源の一部は社会保険料の上乗せ(支援金制度、1人あたり月額約500円)で賄われる。筆者の分析では、防衛費倍増と少子化対策の財源を合わせると約6兆円の追加財源が必要だが、明確な増税や歳出削減の裏付けがないまま、事実上の「先送り」が続いている。日銀OBの一人は「財源なき歳出拡大を続ければ、最終的には『インフレ税』か『金利上昇による強制調整』のどちらかで国民が代償を払うことになる」と警告する。

プライマリーバランス黒字化の「幻想」

政府は「2025年度のプライマリーバランス(PB)黒字化」を財政健全化の目標に掲げてきた。2024年1月の試算では、好調な税収を背景に2025年度のPB黒字化が「射程圏内」とされた。しかし、この試算には重大な前提条件がある。名目GDP成長率3%以上、消費者物価上昇率2%以上という「バラ色のシナリオ」が前提だ。仮にこれらの前提が崩れれば、PBの赤字は再び拡大する。さらに問題なのは、PB黒字化は「債務残高の増加を止める」条件ですらないという事実だ。利払い費を含めた財政収支で見れば、PBが黒字でも債務残高は増え続ける。筆者の試算では、債務残高のGDP比を安定させるためには、PBのGDP比2%以上の黒字が最低10年間持続する必要があり、これは現実的にほぼ不可能だ。

財政健全化は「完全に破綻した」のか

結論として、日本の財政健全化は計画レベルでは「完全に破綻した」と言わざるを得ない。過去30年間、政府は「○○年度までにPB黒字化」という目標を掲げては先送りし、結局一度も達成していない。しかし、これは日本経済が破綻するという意味ではない。日本が財政危機を回避できている理由は、国内貯蓄の厚さ、自国通貨建て債務の構造、そして日銀という「最後の買い手」の存在だ。しかし、金利の正常化が進むにつれて、これらの「安全弁」は徐々に効力を失う。2026年度予算案は、日本の財政が「持続可能」と「破綻」の間のグレーゾーンで綱渡りを続けていることを如実に示している。この綱渡りがいつまで続けられるのか。それは市場が決めることであり、政治家が決められることではない。