年収800万円の手取りが10年で62万円減っている事実を、なぜ誰も報じないのか

年収800万円——日本では「勝ち組」とされる水準だ。しかし、この10年で手取り額は静かに、しかし確実に減少している。2016年と2026年を比較すると、その差は約62万円。月換算で5万円以上の目減りだ。

社会保険料という「見えない増税」

最大の要因は社会保険料の上昇だ。健康保険料率は10年間で約1.5%上昇し、厚生年金の等級上限も引き上げられた。介護保険料は40歳以上で年々増加。年収800万円の場合、社会保険料だけで年間約38万円の負担増になっている。

所得税の「ステルス増税」

給与所得控除の上限引き下げ(2020年改正で220万円→195万円)、基礎控除の実質的な頭打ち。配偶者控除の所得制限強化。個々の改正は小さく見えるが、積み重なると年間約15万円の増税効果がある。

インフレという「第三の税金」

名目年収が据え置きでも、物価上昇分だけ実質的な購買力は低下する。2023年以降のインフレ率を加味すると、実質手取りの減少幅はさらに大きい。「年収800万円の生活水準は、10年前の年収650万円程度」と試算するエコノミストもいる。

報じられない理由

なぜこの事実が大きく報じられないのか。理由は単純だ。「年収800万円の人は同情されにくい」。メディアは低所得層の苦境か、富裕層の節税テクニックを好む。中間層の静かな没落は、ニュースバリューが低いとされる。しかし、この層こそが消費と納税の中核を担っている。中間層の購買力低下は、日本経済全体の縮小に直結する。