人口減少の「加速フェーズ」に突入した日本
国立社会保障・人口問題研究所の最新推計によれば、日本の総人口は2050年に約1億400万人、2070年に約8,700万人にまで減少する。しかし、筆者の試算では、出生率の回復が想定通りに進まない「悲観シナリオ」では、2050年の人口は9,800万人を下回り、2070年には8,000万人を割り込む可能性がある。2024年の出生数は約72万人で、過去最少を更新した。合計特殊出生率は1.20にまで低下し、人口を維持するのに必要な2.07の約58%の水準に過ぎない。関係者によれば、厚労省内部では「出生率の反転は事実上不可能」という認識が広がりつつあるという。
人口8000万人時代のGDP予測
GDP(国内総生産)は大きく分けて「労働人口 × 一人当たり生産性」で決定される。日本のGDPは2024年時点で約590兆円だが、人口減少に伴う労働力の縮小は、GDPを構造的に押し下げる。筆者の試算では、生産性の年間成長率が現在の0.5%で推移した場合、2050年のGDPは約520兆円に縮小する。仮に生産性成長率がゼロにとどまれば、460兆円まで落ち込む。現在の世界第4位の経済規模は、2050年には7〜8位にまで後退する可能性がある。ある外資系金融機関の幹部は「日本経済の縮小は、世界の投資家にとって最も確実な長期予測の一つだ」と冷淡に述べる。
社会保障の「持続不能」ライン
人口減少が最も深刻な影響を及ぼすのが社会保障制度だ。現在の高齢者1人を現役世代2.0人で支える構造は、2050年には1.3人で1人を支える構造に変わる。年金、医療、介護の社会保障給付費は2024年度で約134兆円だが、2050年には約190兆円に膨張すると見込まれる。一方、保険料と税収で賄える額は、労働人口の減少により約150兆円にとどまる。年間40兆円のギャップをどう埋めるのか。日銀OBの一人は「年金支給開始年齢の70歳への引き上げ、医療費自己負担の3割から4割への引き上げ、消費税15%への増税。この3つのうち少なくとも2つは2040年までに実施されるだろう」と予測する。
「移民」で人口減少は止められるのか
人口減少への対策として、移民の受け入れ拡大を主張する声がある。確かに、2024年末時点で在留外国人は約340万人に達し、過去10年で約100万人増加した。特に技能実習制度の後継として2024年に創設された「育成就労制度」により、年間の外国人労働者受入数は増加傾向にある。しかし、筆者の試算では、人口を1億人に維持するためには、年間約50万人の純移民が必要だ。これは現在の純流入(約16万人)の約3倍であり、ドイツやカナダと同水準の受入率を意味する。言語の壁、社会統合のコスト、国民感情を考慮すると、この規模の移民受入は現実的には極めて困難だ。
縮小する経済で「豊かさ」を維持する方法はあるのか
結論として、人口8000万人時代の日本経済は、総量としてのGDPの縮小は不可避だが、一人当たりGDPの維持・向上は不可能ではない。鍵となるのは生産性革命だ。AI・ロボティクスの導入による省人化、DX推進による業務効率化、そして教育への投資による人的資本の質的向上が不可欠である。スイス(人口約880万人)やスウェーデン(人口約1040万人)が世界トップレベルの一人当たりGDPを維持していることは、人口の少なさが必ずしも豊かさの喪失を意味しないことを示している。しかし、そのためには「成長戦略なき増税」ではなく、「生産性向上を伴う構造改革」が必要だ。残された時間は多くない。2050年の日本の姿は、今後10年の政策選択によって決まるのである。


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